日蓮宗 角田山妙光寺 角田山妙光寺トップページ
寺報「妙の光」から 最新号 バックナンバー
HOME >> 寺報「妙の光」から >> 誌上法話 〜まず臨終の事を習うて 他事を習うべし〜

誌上法話 〜まず臨終の事を習うて 他事たじを習うべし〜
(日蓮聖人『妙法尼御前御返事みょうほうあまごぜんごへんじ』)

2017年9月号

小川英爾


突然の末期がん告知
 東京のNさんは、作秋妙光寺で法事をされ、お斎の席でお酒をご一緒しました。今年1月には、ある会合でも同席させていただきました。2月には学生時代からの仲間たちと長野と岩手でスキーを楽しむ元気な82歳でした。3月に入り食欲不振で通院し、水分不足ではとポカリスエットを勧められたものの改善せず、1週間後再受診して処方されたのが胃腸薬。それほど元気だったそうです。なかなか食欲が回復しないので大学病院で検査をしたら、胃も食道も侵された末期がんで治療のすべがないとわかりました。
 その時点で、メールにご自身が「本人はいたって元気です。在宅で訪問診療を受けることにしました。7月のお盆で上京の際にはぜひ寄って欲しい。その頃には順調に悪化していると思います」と、冗談を書くほどでした。

自宅での平穏な最期
 7月14日ご自宅を訪ねると、ベッドの上でやや辛そうにしておられました。「昨日までは起きてご住職をお迎えする。だから排尿の管も痛み止めもしない。戒名を直接お願いする≠ニ申しておりましたが、熱が出てだるいようです」と傍らの奥様の言葉です。声を出す元気はなくても、私の問いかけにはしっかり応答されました。「17日に新潟に戻ってから戒名をお送りします」と約束してお宅を辞しました。しかし翌15日に急変し、17日夕刻文字通り眠るように静かに息を引き取られたとお知らせがありました。
 1週間後、ご自宅での葬儀にお伺いしました。Nさんのお顔が微笑んでいるように見えたのは私だけではありませんでした。にこやかな遺影は、昨夏妙光寺の境内でプロのカメラマンが撮ったものでした。

まず臨終のことを
 冒頭の日蓮聖人のお言葉は人の死に遅い早いはなく誰にも必ず訪れるもの。だからいつその時が来ても良いように、心の準備だけはして置くように≠ニいう趣旨です。法話でお話することの多いお言葉ですが、私自身どれほど実感を込めて語っていたか、正直言って自信がありません。しかし出棺の際「高齢になったら健康診断は受診しない。病はそのまま受け入れる≠ヘ故人の口癖でした。妙光寺様とのご縁をいただいて夫婦で毎年夏に伺い、葬儀関連の先生方とも親しくさせていただき、死について色々学ばせていただきました。こうして穏やかな最期を迎えられたのは、そのおかげです」と奥様はご挨拶してくださいました。
 学生時代からスポーツマンで病気知らず、くよくよしない明るい性格で世話好きという前向きな生き方も幸いしたでしょう。一方、大切なお嬢さんに突然先立たれるという辛い出来事にも出会われました。
 人生の幸不幸は、誰にもあります。それでも有頂天になったり、落ち込んだりしない信念ある姿勢に学ばせていただきました。Nさん、ありがとうございました。
 

 前のページへ戻る
  道順案内 連絡窓口 リンク