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「92歳の現役」 巻甲 小林 むつさん(92歳)

2013年12月号

鎌田義明

小林 むつさん(92歳)
   巻甲 小林 むつさん(92歳)

巻の與市さん(屋号)の婆ちゃんというと、誰もがこの笑顔を思い浮かべる。むつさんは大正10年、巻七区で農業を営む西村家に、3人兄妹の長女として生まれた。幼いころより農作業を手伝い、小学校を終えて20歳まで実家で過ごした。

終戦をむかえて無事に帰ってきた夫、小林与志英さんと、叔母さんの紹介で結婚した。当時のことゆえ、文字通り身ひとつで嫁に来たという。嫁いだ小林家も専業農家で、義父に付いて一生懸命働いた。幼いころから手掛けた農作業はお手のものだった。しかし、当時小林家には、戦争の疎開者たちが8人も住んでいた。食べ物の少ない時代に疎開者と家族、計16人もの食事を毎日作った。早朝からワラで飯を炊く生活が1年余り続いた。それが一番苦労した、と当時を語る。

昨年他界した夫、与志英さんが、長年妙光寺世話人として、様々な問題を解決し、お寺の整備に貢献してきたのも、この人の支えあってのことである。その世話人はいま、長男の与志隆さんが引き継いでいる。十数年前には、三男の忍さんを交通事故で亡くした。いまも月命日には、自宅の仏壇に欠かさずお参りをし、おこわを炊いてお供えしている。

信仰心の厚い小林家の中心として、朝夕の読経の勤めは今も怠らない。義母が亡くなってからは、巻講中まきこうちゅうの講員として、月に1回行われるお経会を40年の間勤めた。今は嫁の光枝さんがタスキを受け継ぎ講員を勤める。

とにかく驚くのが、この歳で畑仕事の現役であるということだ。朝食後に乳母車を押して畑まで行き農作業。昼食に自宅に戻り、午後からまた畑に向かい夕方まで農作業。片道1キロの畑まで、毎日二往復するのである。時には弁当持ちで行くときもある。「じっとしてられね性分なんだー」と笑う。収穫した作物を人々に分けるのもまた楽しみの一つだと言う。現在、孫が9人、曾孫が3人いる。それぞれの成長を見守るのも、また楽しみだ。

この歳まで病気で入院したことがない。病院のベッドで寝たのは、4人の子が生まれたお産の時だけである。知り合いや、友だちが皆亡くなり、自分ひとりになってしまったことは、やはり寂しい。しかし今こうして自分の足で歩いてお寺参りが出来、仏様、ご先祖様に手を合わせることが出来るのが、何よりも幸せなことだと思う。これからも生きる糧として信仰心を持ち続けたい、と意気込みを語ってくれた。お題目の 団扇うちわ太鼓の叩きっぷりは、まだまだ力強い。

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