日蓮宗 角田山妙光寺 角田山妙光寺トップページ
寺報「妙の光」から 最新号 バックナンバー
HOME >> 寺報「妙の光」から >> バックナンバー >> 2003.12〜2013.12 >> 住職の研修 座禅断食修行体験

住職の研修 座禅断食修行体験

2009年3月号

小川英爾

土曜の夕食を軽めにして日曜は朝から水以外絶食のうえ、松本の温泉旅館に夕方6時の集合から座禅断食会は始まった。野口法蔵師という臨済宗の僧が指導者で、私が参加した回で百何回目かになるときいた。野口師とのご縁は10年来になる。以前は新潟の津川にいたからよく妙光寺に寄られ、昨年も新潟がんセンターの医師と一緒に来られたので秋の講話をお願いし、その際にこの座禅断食の話を聞いたのがきっかけだった。痩せたいからではなく、修行の形として興味があってのこと。

貸し切りにした小さな旅館の大広間に45人が全国から集まった。日程説明によると1日目は夜9時半までで、基本は20分の座禅と40分の全く自由な休憩時間を繰り返し、3日目までに10回の座禅がある。その間2日目の昼ころに野菜ジュース1杯とあとは水、お茶、塩だけしか口にしない。参加者の6割が女性で、世代は親に連れられた女子高生から70歳くらいまでと幅広く、私のように初心者から10回以上という人もいた。目的の多くは病気を治したいというもので、ノイローゼや過食症といった精神の病から、肝炎、強度のアトピー等々様々。それぞれが休憩時間に健康になるための情報交換を熱心にする姿を見て、いかに病む人が多いのかと考えさせられた。

20分の座禅が辛いという声が多く聞かれたが、私にとっては普段のお経で慣れているせいかむしろ楽しく感じられ、さらに3日間電話も来客もない時間は実にありがたかった。不安だった空腹もそういうものだと思えばさほど苦にならならず、他の断食道場と違い座禅することでかえって精神統一ができる点で効果が高いのだと説明され納得できた。こうした断食の効果や、健康であるための日常生活の話が折にふれて野口師からあり、医者との共同研究を継続しているというだけあって合理的で理解できる内容だった。それでいえば、普段いかに食べ過ぎているかを反省させられた。全体の参加者のなかには、西洋医学に限界を感じている医者がとても多いというのも頷ける気がする。

夜は空腹による疲労感からよく眠れるが、3日目の朝は起きづらかった。こうした体調の変化は個人差があるそうだ。あっという間の3日目を迎えて朝9時半、10回目の座禅を終えると食事になる。まず水をどんぶり3杯、続いて大根を煮た汁に梅干しを2〜3個を入れこれをどんぶり3〜6杯。さらに中皿に大盛りの生野菜に味噌をつけ、他にもチーズ、羊羹、パン、ヨーグルト、リンゴ、ジュース、ミルク紅茶等々。やがて皆がトイレに駆け込み、これを2度3度と繰り返し、俗に言う宿便が出る、というのだが・・・。私も同室の人も出たのは水溶性のものばかりで固形物は出てこなかった。これも個人差があるという。

やがてすっきりした顔で全員が感想を述べ合って12時過ぎに解散となった。なるほど確かに爽快感があって、体も頭もきりっとした感じがある。車での帰り道、激しい雪の高速道路をあまり好きではない運転ながら、3時間半休憩しようとも思わず疲れを感じることもなく、むしろ高揚した気分で戻った。断食のお陰か座禅のせいか、両方の相乗効果かもしれない。

断食明け3日間は普段の半分の食事量を野菜だけで、酒と肉類は1週間厳禁と指示された。これを破ると新鮮になった腸からの吸収が良すぎて、体に受けるダメージが大きいという。ありがたいことにあまり欲しいとは思わなかったことも、断食の効果かも知れない。理想的には半年に3回の断食をすると、小食で健康的な食生活に慣れることで心身の健康が保たれるそうだ。健康体だとそこまでして酒を止めたいと思わないだろうが、健康に不安があると切実に考えるだろう。毎月開催しているこの修行が3か月先まで予約でいっぱいというのも頷ける。

2年前のフェスティバル安穏の講師をお願いした広島大学で宗教学を教える町田宗鳳先生は、長年禅修行をされた元僧侶だが「私も野口さんに教わり、自分なりにアレンジしていま広島で皆さんを集めてやっていますよ」と言われた。親しみやすく効果的な修行が寺に求められていることを知るいい機会だった。

  道順案内 連絡窓口 リンク