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誌上法話  不惜身命(ふしゃくしんみょう)『妙法蓮華経・比喩品第三』

2016年3月号

小川英爾


【意味】
 仏のために自らの命を惜しいと思うことなし

真田幸村と六文銭
 真田幸村を主人公にしたNHK大河ドラマが人気です。戦国最後の激戦で散った幸村の逸話は、後に講談本や小説で庶民に知られました。知勇兼備の将・戦国一の兵という勇猛果敢な印象があり、特に大阪では大変人気の高い戦国武将です。
 派閥や無能な権力者の跋扈する時代に少数の陣営で果敢に挑むその姿が、似通った現代に生きる人々に世代を超えて共感されているのが人気の理由ではないかと、何かで読みました。
 真田幸村と言えば、旗印は家紋の六文銭が有名です。六文銭は三途の川を渡る船の渡し賃として、死後に棺の中に納められました。昔の人々の間には死後の最初の行き先であろう六道世界(地獄・餓鬼・畜生・修羅・人間・天上)に対する意識が非常に強く、これにあやかって「死者に六道の数にあった銭を持たせれば清く成仏できる」と考えたようです。今は紙に印刷され、葬儀の習慣として残っています。

不惜身命
 この真田幸村の家紋は『不惜身命の六文銭』と言われます。戦乱の世の武将として、戦場での駆け引きだけでなく日常においても自らの死を惜しまない♀o悟を、三途の川の渡し賃となる六文銭で表したといいます。
 大相撲の元横綱貴乃花関が、平成6年横綱昇進の際の口上で「相撲道に不惜身命を貫く所存です」と述べたことは当時話題になりました。「命を惜しまず、相撲道に精進するという意味で、これは俳優の緒形拳さんからいただいた言葉なんですよ」と取材で答えていましたが、そもそもの由来は『法華経』です。

不自惜身命
 『法華経』にはこの「不惜身命」の他に、「不自惜身命」が出てきます。こちらは『如来寿量品第十六』という皆さんには最もなじみのあるお経にあります。「自らの命を惜しむことなく仏様(お釈迦様)に出会いたい、真のお気持ちを十分に理解したいと心から願う」という私たち信者の心構えを説かれた一節です。
 「不惜身命」「不自惜身命」は、ひたすらな決意と行動がなければ物事の成就は困難であるという教えです。せちがらくなった現代社会で、今またこの言葉が人々の共感を呼んでいるようです。仏教信者にとっては常に基本となる大切な言葉なのです。
 

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