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誌上法話 〜ごちゃまぜ≠フ教え〜

2017年7月号

小川英爾


 「同じ大地に根をはやし、同じ雨にうるおされたといっても、草木にはそれぞれ違いがある」(『法華経・薬草喩品第五』正木晃訳)

ごちゃまぜ≠フ実践
 石川県のある社会福祉法人が新しい地域作りのあり方として注目されています。現在金沢市、小松市、白山市等で活動する『佛子園』と言い日蓮宗のお寺が母体となっています。
 特徴はいろいろありますが、住民なら無料の温泉と居酒屋がその中心です。そこでは知的障がい者や、併設する「サービス付高齢者住宅」に住むお年寄りが、いきいきと働いている姿が見られます。
 また近くの大学に通う学生の住まいや高齢者のデイサービス、学童保育所。さらにはプールも備えたフィットネスクラブに診療所、花や日常雑貨の売店、地域住民がマイカップを預ける無料談話室等々を擁した地域の核となる施設として根付いていました。
 職員はもとより集まる人たちが、老若男女障がいの有無も分け隔てなく混じりあっているのです。雄谷(ルビおおや)理事長(55才)は「いろんな人がごちゃまぜに暮らす街です」と明るく語ってくださいました。

初まりはお寺の福祉活動
 当初は、日蓮宗行善寺が始めた戦災孤児の収容施設でした。その後1960年に知的障がい児を含めた社会福祉法人となり、住職が宗教誌を販売して子どもたちを引き受けてきました。住職の孫に生まれた雄谷さんは、両親が施設で365日24時間働きづめだったので、小学校中学年まで10人部屋で障がい児たちと一緒にごちゃまぜで育ったそうです。
 やがてそこで一緒に暮らした仲間の子どもたちが学校に行けず、社会でも受け入れてもらえない現実を知りました。そしてみんなが一緒に生きられる、地域も巻き込んだ施設のある街づくりをめざすことにしたそうです。

『法華経』の教え
 日蓮宗僧侶で住職でもある雄谷さんは、依頼されて元他宗派のお寺を改造した施設のひとつに『三草二木』と名付けました。冒頭の『法華経・薬草喩品第五』が由来だと語ります。この教えは薬草に大中小(三草)、木に大小(二木)の違いはあっても、雨の恵みは平等に受けて薬草に育つ。同じく人に能力・素質の違いはあっても、等しく仏様の教えを受けることで悟りを得て、誰もが世の中を救う人になることをいいます。
 それをごちゃまぜ≠ニ易しく言い換えて「障害をもって生まれた子、何の障害もない子、子どもからお年寄り、元気な人、病気の人など、世の中にはいろんな人がいる。だから面白くて魅力的なものになる。それぞれ存在しているだけで価値があり、みんなで一緒に同じ場所に生きているということ自体に意味がある。そういう場でありたいという願いを込めた」のだそうです。
 現地を見学して居酒屋でお酒を交わしながらお話を伺い、お経は読むだけでなく実践してこそ意味があるのだと改めて痛感しました。
 

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