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日本の寺、韓国の寺 ―韓国での講演から―

2013年7月

韓国の大学で講演

5月に韓国の大学で講演の機会をいただきました。お世話になっているソウル大学名誉教授の李先生から「私の教え子が教授をしている全北大学で」という依頼があったのです。ソウルからKTXという韓国の新幹線で2時間の全州市にあり、地方国立大学のなかでも歴史のある、学生数2万人の大きな大学でした。

『日本の壊れる家族と寺』のテーマで、通訳を交えて1時間。日本では少子高齢化が進み、さらに離婚と非婚が増加して、一人暮らしの高齢者が急増するなど、家族の形が大きく変化している。日本の寺がこれに対応できず危機を迎えるなかで、妙光寺では・・・といった内容です。

最近の韓国は日本以上に少子化、高齢化が進み、離婚率は世界一とか。そのため日本と同様に福祉と介護、そして葬儀や墓が大きな問題になっています。

韓国の寺

ところが、質問が集中したのは意外な問題でした。男性教授のひとりが、次のように言いました。「自分は以前僧侶になろうと仏門に入った経験がある。講演された日本の寺と、韓国の寺があまりに違うので大変驚いた。韓国の僧侶はごく一部の宗派を除いて独身で、寺を子供が継ぐことはない。一般の人が僧侶を目指すには修行を積んで出家得度し、その後も寺で生涯に渡り修行に明け暮れる。次の住職はその中から決まる。

信者も教えを聞き、自分の修行や祈りのために寺を訪れる。法事や葬式もあるが、家族の変化が寺に影響を及ぼすほどのことはない。そもそも檀家制度がない。

僧侶は修行で得た教えを社会の人々に説き聞かせるから、全国的に高名な僧侶が幾人もおられる。こうした高僧が亡くなると、精神的指導者を失った悲しみをいだく信者が全国規模でいる。日本にはそういう僧侶はおられますか。僧侶になるのに何年間の修行がありますか。その後も修行を続けますか。」

時間の都合上、日本の寺の歴史を省略したから当然の質問でした。

日本の寺

日本の僧侶は家族で寺に住み、檀家の葬式と法事で生計をたて、他の国に比べて短期間の修行で子供が後継者となる。修行生活というより、一般人と変わらない生活だと見る声もあります。

檀信徒の悩みを聞き、住職と檀家が共に先祖の供養の場を維持してきたのが日本の寺。そんな説明をしながら、言い訳に聞こえるだろうなとは思いました。幸い通訳の教授が、東京大学で博士号を取られた日本文化の専門家で、詳しく補足してくださいました。

今の日本の寺の形は江戸時代以降のものです。幕府や地方の殿様や豪族の寄進で寺が増え、整備されました。そのうえで一般庶民は信仰に関係なく、無理やりどこかの寺の檀家にさせられた日本だけの制度です。仏教が伝わった奈良時代も、日蓮聖人の鎌倉時代も、宗教や寺は自分自身で選びました。

ソウルに戻って訪ねた寺で、信者の人たちが楽しそうに行事を手伝う光景は妙光寺と一緒でした。でも、何かが違う。講演の後で一緒に食事をした大学院生たちは、私の質問に自分の宗教を、「私はキリスト教」「仏教」と全員がはっきり答えてくれました。街で尋ねた法衣を縫う女性は「私の長男は18歳でお坊さんになって修行中です」と嬉しそうに語りました。

僧侶が修行し、お釈迦様の教えを伝えるのが世界の寺です。民俗や歴史の違いがあるとはいえ、日本の寺の姿を改めて考えさせられた韓国の旅でした。

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