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寺の世襲

2013年4月

初の世襲住職

妙光寺は今年で開創700年を迎え、私は53代目の住職にあたりますが、実の親子で代を継いだのは初めてです。父である先代は長岡市の農家在の生まれで、子供がいなかった先々代の養子として5歳のとき妙光寺に来ました。

僧侶の結婚が公に認められたのが明治5年で、それまで寺には弟子はいても、妻も子供もいませんでした。先々代が住職として初めて結婚しましたが、子供が生まれなかったそうです。当時数名いた弟子の中でも一番年下の父が住職を継いだので、先輩弟子らからいじめられて苦労したと聞きました。

こうして妙光寺の世襲は実体化してきましたが、本来は弟子が継ぐのが今もって建前です。手続きの上でも、子供だからといって自動的に住職を継げるわけではありません。

世襲の問題

4年間勤務してくれた永石上人が、大分の父親の寺を継ぐことになり、3月末で妙光寺を離れます。妙光寺に来たきっかけが父親とのトラブルだったので、解決して戻られるのは何よりです。永石上人なりに葛藤があったことでしょう。

後任探しに苦労しましたが、千葉県のA寺の次男であるA君(24歳)が決まりました。長男は別の道を目指して勉強中とか。彼はまだ修行中の身なので、研修生という立場です。A寺は伝統的修行道場を抱える歴史の古いお寺なので、A君が父親の後を継ぐにはこの先かなりの修行が必要です。耐えられなければ、僧侶にはなれてもA寺の住職には就けません。こうして血縁でない形で守られてきたことで、日本のお寺は何百年と長く続いて来たのだと思います。

一方で、歴史的に代々世襲されて来たのが主に浄土真宗のお寺です。しかし日本の宗派の割合から言えば、建前とはいえ世襲でない寺の方が多数です。世襲の良さもありますが、寺の後継者には家の職業を継ぐといった感覚が一部にあって、寺は公の存在であることを忘れがちです。歴史のあるお寺を維持していくのはとても大変なことです。家業を継ぐという安易な気持ちでは勤まりません。

妙光寺の場合

幸いにして?私は娘ばかりで、男の子がいません。そこで後継者となる弟子を育てて、60歳で引退すると言ってきました。今いる弟子の鎌田上人は、秋田で板金業を営む父親の長男です。しかし彼は前々から妙光寺の執事長に徹すると言います。これはこれで尊重したいと思います。

そんななかで、昨年9月にとうとう60歳の還暦を迎えました。しかし力不足で、後継者の決定はなりません。はからずも檀信徒有志に開いていただいた還暦祝いの席上「還暦で引退なんて絶対ダメ。もっと頑張って」と皆さんから言われ、感無量でした。その前に家族からも還暦を祝ってもらったのですが、そこでは「娘たちの誰かが婿さんを貰って妙光寺を継ぐという世襲は考えていない。もし気持ちがあるなら、自分が尼僧になる覚悟でやって」と話しました。お寺で育ててもらったことを感謝しつつ、妙光寺を離れてしっかり生きていってもらえばいいというのが、偽りのない気持ちです。

ところがしばらくして、28歳になる長女が「私でもできるかしら。以前から興味があってやりたいんだけど」と言ってきたのです。結果的には世襲になりそうで、私には慨促たる思いがあります。そこで長女は、まずは私らが仲人をさせていただいた鎌倉市円久寺のご住職の弟子として、1月末に同寺で得度させていただき、尼僧の道を歩き始めました。一人前の尼僧になるには、少なくともこれから2〜3年はかかりそうです。

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