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夫を支えて70年 河野アキさん(90歳)

2009年3月号

小川英爾

河野アキさん(90歳)

アキさんはこの1月に70年連れ添った夫、與二郎さんを看取った。一つ年上の與二郎さんと21歳で結婚したものの、すぐに徴用だ戦争だと離れた暮らしが長かったので寂しさには慣れているという。二人は共に実家が妙光寺檀徒で親同士が兄妹の従兄弟だった。

與二郎さんは早くに父親と死別したせいか若い頃は気持ちの荒れるところもあったが、アキさんが持ち前の明るさと優しさで支えてすっかり穏やかな人になった。長年工場勤めしたがあるとき薬品で火傷を負い、定年を前に辞めざるを得なかった。その後の生活は年金と長男夫婦が支えた。15年前、自転車で行った日帰り温泉の帰り道、道路に飛び出した子供を避けるために急ブレーキをかけて転倒。「将来のある子供に怪我させてはいけないと必死の思いだった」と後に語っていた。救急車で運ばれ頚椎損傷で入院。これを機に老化が進み、順子さん(長男の嫁)の応援を得てアキさんが付きっきり介護した。病院でも「仲の良い夫婦ですね」といつも言われたそうだ。

2人の両親ともに信仰熱心だったせいか、アキさんは子供心にもお盆などのお寺参りが大好きで、いまだに思い出だという。復員した與二郎さんとの生活が落ち着いてから仏壇が欲しくなり、近所の店で中古品のお洗濯したものを購入した。同じ頃アキさんの祖母の実家に嫁いだ姉から「ご縁でうちに3体あるお祖師様(日蓮聖人)像の一つを上げる」との話がきた。「祖母の実家にはよく遊びに行き、なぜか幼心にも気にかかっていた一体を迷わず戴いてきました」。以来、長男と協力して建てた家でずっと大切にお守りし、「親から耳で教わったお経ですが必ずお経本を読んで、毎日家族や親族の安全をお祈りしています」と。

数年前に與二郎さんは病床から墓とご本尊のお曼荼羅を希望され、実現したときはとても喜んだ。その前、妙光寺の本堂建て替え工事には積極的に寄付を申し出られた。「貧乏だったけど初代だから、お仏壇、仏具、お墓、ご本尊、この間にお寺が良くなったりと、一つひとつ揃えて来るのが楽しみだった。身延山へも御前様に連れて行ってもらったし。いまは若い者がよくしてくれるので本当にありがたい」と、ニコニコと穏やかに話すアキさん。神経痛が痛いそうだが、耳も目も何より記憶がしっかりしている。

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