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身近な震災復興支援

2011年7月号

小川英爾

このたびの災害では本当に数多くの犠牲者があり、また福島原発事故は最終的な被害の予測がいまだにつかめない、不安な日々が続きます。被災の方々にお見舞い申し上げ、犠牲者のご冥福、一日も早い原発事故の終息を祈るばかりです。

関係者に甚大な被害はありませんでした

地震発生時、私は寺で来客の対応中でした。地盤がいいのか地震でもあまり揺れを感じないのですが、今回はここでこれだけ揺れるということは震源近くの被害が大きいのではと思い、急いでテレビのスイッチを入れました。

やがて被害の様子が刻々と映し出されます。まずは仙台に住む私の娘、そして兄夫婦、さらには東北地方にお住まいの檀信徒・会員の方々の安否です。電話は全く不通です。やがて娘はメールで無事を確認。しばらく後、アメリカにいる兄夫婦の三女から、両親は無事とのメール。偶然かアメリカからの電話が通じたらしいのです。

数日後、固定電話の通話ができるようになってから、東北と北関東にお住まいの30軒余りの檀信徒・安穏会員に安否の確認をさせていただきました。1件を除いて全員無事、その1件も後日無事が確認できました。「家の中はめちゃめちゃですが、家族皆元気です」「家の手前100mまで津波が来たけど無事でした」「ウチは大丈夫なんだけど駅も鉄道も壊滅的で、どこにも逃げられない」。とにかく生命にかかわる被害の方のないことは幸いでした。

妙光寺の被災者支援態勢

それなら被災地に妙光寺として何ができるか。現地に向かうと言っても何ができるわけでもないし、途中の道路情報もガソリンも現地の情報も何もない。仙台市内の知り合いの住職に電話が通じて尋ねたら、現地でもまだ何も手がつけられない状況とのこと。内部で相談の結果、新潟に避難している方々の受け入れができないか。体育館ではつらい高齢者や、幼い子供のいる家族を5組までなら比較的ゆったり過ごしてもらえる。檀徒の農家からは「そうなれば米と野菜を提供する」との申し出もいただきました。

早速永石、鎌田上人が新潟市の避難所3ヶ所を訪ね、行政の担当者にお伝えしました。感謝されてその際は連絡する旨の御返事でした。この間、仙台への一般道路が通行可能と知り、私は車で娘と兄夫婦、それに出産を控えて外国から里帰り中の兄夫婦の長女を迎えに行ってきました。その後1か月お寺の近所で暮らした兄夫婦は、昔顔なじみの檀徒さんや、街に買い物に出て被災者としるとお店の人たちが本当に親切だったと、感激していました。

待っていても行政からの依頼は一向になく、再度伺ったら「地域ごとに避難されているので、他の人と別れて別の所への避難希望者がいない。行政でも障害のある子供を抱えた家族の避難所を別に用意してあるが、今のところ希望者がいない」とのこと。やがて受け入れ先も旅館や保養施設が提供されるようになり、妙光寺の出番はありませんでした。

しかし後日、市役所に勤める檀徒の方が「福祉課で妙光寺さんからも受け入れの申し出があったと聞きました」と教えてくれ、役には立たなかったが無駄ではなかったと思っています。また他の日蓮宗の寺でも同様の申し出をしたそうで、事前に寺同士が連携して受け入れ態勢を作れればまた違ったかもしれません。

被災者の雇用

この頃お彼岸もあり、またなぜか葬式が続いて寺を空けることができず、被災地に少しでも物資を届けたいと思っても行けません。何もできないもどかしさを感じ、せめて避難生活が長期化する方に妙光寺で仕事が提供できないか、庭仕事の経験者なら一番いいが、そんな虫のいい話は無いね。そんなことを内部で相談していました。そんな矢先にお話がありました。

依頼している社会保険労務士で女性のTさんと雑談中に、何気なくこのことを話題にしました。するといつもの大きな目がさらに大きくなって、驚いたという感じで話し出したのです。「いらっしゃいますよ、すごくいい方が。福島原発から10キロ程の所で造園会社を経営していた親子が新潟に避難されています。再建が困難なので会社を休眠状態にして従業員を解雇する、そのお手伝いをしました。経営者には退職金も失業保険も出ないので大変ということもありますが、何よりも体を動かさないで、毎日遊んでいるわけにも行かないでしょう。こちらのお庭の管理ならうってつけじゃないですか」と言うお話でした。

早速Tさんのご紹介のもとでお会いしました。お父さんは年金暮らしをするから息子さんだけでも働かせてもらえばありがたいとのこと。36歳の息子さんも経験豊富で申し分ないのですが、それだけの給与は保障できません。ところが新潟市営住宅に家賃無料で入居し、奥さんと二人だけなので働けるだけで十分ですとのこと。専門家のTさんが間に入って色々な条件をテキパキとまとめてくださり、5月の連休明けからとりあえず年内一杯お願いしたのです。

松本さんといいますが、専門職の資格をいくつも持ち、若いから動きも機敏でそして爽やかな人柄です。わずか一家族ですが支援につながり、境内もきれいになって参拝の方々に喜ばれ、妙光寺全体にとってもありがたいことになりました。繋いでくれた社会保険労務士さんも日頃から妙光寺の運営に共感され、安心して双方を紹介くださいました。不思議なご縁に皆さんで驚き、双方で感謝するばかりです。

様々な支援を

先日僧侶の勉強会である大学の先生の講義を受け、復興支援が話題になりました。皆さんが身近でできることからやればいい。多く義援金が寄せられているが、その配分方法と時間のかかることが問題だ。宗教教団で集めた義援金は、行政を通じてばらまかれるより、まず被災地のその教団の寺の復興を優先すればいい。批判も出るだろうが、地域で寺がいち早く復興することは、精神的にも経済的にも波及効果は大きい。日本では理解されにくいかもしれないが、アジアの多くの国では災害が起こると、村人が一番先に宗教施設を復興する例が多い。そのようなお話でした。

細かく見ると支援にも色々な考え方とやり方があることがわかります。また様々な震災の体験談にも、被災地はもとより交通がマヒした首都圏でも、見ず知らずの人たちが助け合った心温まる話をたくさん耳にしました。画一的になりがちな行政の支援の一方で、一人ひとりの思いやりがまずは基本だろうと思います。一日も早い復興が望まれますが、息の長い支援も忘れたくないものです。(妙光寺でも日蓮宗の義援金要請にご協力お願いしています)

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