日蓮宗 角田山妙光寺 角田山妙光寺トップページ
住職紹介 現在の取り組み 住職ここだけの話
HOME >> 住職紹介 >> 住職ここだけの話 >> 見えない結果に祈る

見えない結果に祈る

2013年9月

温かい家族に突然の不幸

新潟市の鈴木さん(仮名)夫妻は娘2人だからと、5年前に安穏廟を申し込まれました。社内結婚の夫妻は、同い年で当時54歳でした。

ご主人の仕事柄単身赴任が多いせいか、はたから見てもとても仲の良い家族で、揃ってお寺の行事にも参加されていました。3月の開創700年法要にもご夫婦で参加し、ご主人は身延山から東京の仕事先に直接戻って行かれました。「定年になれば、もっと落ち着いて妙光寺さんにお参りできるね」と話していたそうです。

ところが翌月の4月中旬、妻の華子さんから妙光寺に電話があり「夫が会社を変わり新潟に戻った矢先の今月初め、進行性の胃がんで余命3カ月と言われました。7月には長女の結婚式も控えています。私はひとり娘で夫も東京に兄が一人いるだけで、相談相手がいません。どうしたらいいのでしょう」とおっしゃいます。「大変でしょうが、とにかく看病を最優先してください。残された時間を少しでも大切に過ごせるようにしましょう。もしものときは妙光寺で一切お手伝いしますから、心配しないで」とお応えました。

そして2か月後の6月中旬「いま夫が亡くなりました」と、連絡があったのです。

葬儀の参列者は家族3人と東京の義兄夫妻、それに華子さんの叔母さんだけというので、小規模にできる『京住院』にご遺体をお迎えしました。「会社を変わったばかりで」ということでしたが、何度も見舞ってくれた元同僚にお知らせしたら、東京からも含めて参列者が30名を超すことが分かり、急きょ式場を本堂に変更です。受付やら接待やらに長女の婚約者も来て、家族総出です。祭壇の遺影は病床のご主人と、ひと足早く借りてきたウェディングドレス姿の長女を中心にした病室での家族写真でした。

結果は来世に

家族仲も良く周囲に慕われ、しかもお寺とのご縁も大切にされるような方が、なぜ60才の若さで娘の結婚式直前に逝かなければならないのか。誰しもが思うことです。住職としてもかける言葉に悩みました。

「仏教では因果(いんが)≠ニ言って、結果の元には必ず原因があると教えます。しかし今日の鈴木さんのように、善いことを積み重ねた原因があっても、必ず良い結果に恵まれるとは限らないのも現実です。じつは仏教では三世といって私たちは前世、現世、来世の三世にわたり生きると説きます。だから必ずしも現世だけで結果が見られるとは限りません。目に見えない次の来世で良い結果が見られると信じることを教えています。この世で見える見えないにかかわらず、努力し、見えないことにも感謝し、良い結果を祈ることが大切です」と、お通夜で法話させてもらいました。

通夜振る舞いの席で、婚約者のお父さんから「仕事柄多くのお通夜の席に伺いましたが、今夜のお話には感銘を受けました」と仰っていただきました。

葬儀の全てが終わると華子さんは「家族みんなで一所懸命やったね。お父さんも喜んでいてくれる気がする。さあ、今度は結婚式だ。衣装合わせも何も準備できていないから大変だ」と、爽やかにも見えるお顔で遺骨を抱えて帰られました。

一羽の蝶

7月末、華子さん、次女、長女夫妻の4人で四十九日法要がありました。義兄は結婚式の直後なので辞退されたとのこと。結婚式のあいだ中、一羽の蝶が新郎、新婦の周りをずっと飛んでいたそうです。「きっとお義父さんだねって、2人で話していました」と長女のお相手が聞かせてくれました。

  道順案内 連絡窓口 リンク